日本語練習帳

つらみのラプソディを歌います

APS March Meeting 2019(4日目)

かなりぶっちゃけると,4日目は(聴けた範囲で)あまり面白いセッションが無かったので割愛.

ボストン交響楽団・演奏会

詳細なレポートは後日投稿することにして,とりあえず概要だけ.

www.bso.org

メインがTchaikovskyの4番,前プロがLisztのメフィスト・ワルツ第1番(管弦楽版),そして中プロに初演枠. 初演枠というのは,新進気鋭(?)の作曲家Thomas Adèsのピアノ協奏曲.まあ良かったと思う.

ボストン交響楽団の本拠地であるボストンシンフォニーホールに来たのは初めてである. 何となくだが,日本人の気配を多めに感じてソワソワした. 実際,ボストン在住の日本人でボストン響の会員の人が多かったのだろうと思う. まあ,小澤征爾ゆかりの管弦楽団だし,現団員にもちらほら日本人は居るので.

そんなこんななので,記念に写真を撮ったりグッズ(パーカー)を買ったりしました. CDは後から幾らでも買えるので,買わないことにした. どうやら現音楽監督のAndris NelsonsはShostakovichの交響曲全集のレコーディングに本気を出しているらしい. シングルが出揃った暁には改めてアルバムででリリースされる気もするので,それからでも遅くない(割と興味がある).

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ボストンシンフォニーホールの内観と日々のピローチップの成果

APS March Meeting 2019(3日目)

口頭発表を聞きながらの投稿.

会議

午前中は,量子センシング系のセッションに顔を出した.

meetings.aps.org

それ自体が新しい話題なのかどうかには自信がないが,速攻で良い話だと思ったのはこれ:

meetings.aps.org

理解が間違っていなければ,Trotter分解の精度と次数の関係は幾何学的に理解できて,それをベースにすれば(恐らく常に)最適な量子時間発展をシミュレート出来るという話であった.

せっかくなので論文もきちんと読んでおきたい.

arxiv.org

そもそも量子センシングとは何なのかを全く知らなかった.

午後は,Kavliのセッションに行った.

www.aps.org

Heusler合金にちょっと興味が湧いた.

それ以外

今朝はビタミン剤を飲んだ.ちょっと体の調子が変化したかも知れない.

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本日の街の風景と相棒の🐧

APS March Meeting 2019(2日目)

晩御飯前に投稿. というか正確には洗濯待ちの間に投稿(近くにコインランドリーがあって良かったです).

https://www.yelp.com/biz/waterfront-laundry-bostonwww.yelp.com

会議

朝食は,ホテル近くのスタバでハンバーガーを頂いた.というかハンバーガーがある辺り流石であった.

www.tripadvisor.com

午前中は,やはり量子機械学習のセッション引き寄せられてしまった.ZAPATA,IBMXanaduなどの名だたる企業のアフィリエーションを持つ研究者が勢揃いで異様な光景だった.

meetings.aps.org

個人的MVPは「次元削減の量子アルゴリズムを提案しました」というやつで,発表の質が極めて良かった. もし,口頭発表の賞の審査が設けられていれば,間違いなく受賞していたと思うレベル.

meetings.aps.org

自分は決してこの分野には明るくないが,それでも分かったような気にさせられたので,構成が優れていたことには違いない1

昼食は近くを歩いて良さげな飲食店を探そうとしたが,貿易センターの周辺を彷徨いたりした後,SHAKE SHACKというハンバーガーショップで(ry

www.shakeshack.com

午後は,企業ブース・ポスターを雑多に観覧したり他のセッションを覗いたりした.

防寒具のつもりでAPSのグッズであるパーカーとポロシャツを買った.決して嬉しがりではない2

純粋に規模の問題かも知れないが,アメリ物理学会APS)は国際会議場で開催できるというだけでも凄いと思う.例えば日本物理学会JPS)を東京ビッグサイトで開催することになれば,今回みたく企業ブースやポスターは1つの部屋に固められるだろうし,その結果コンテンツの一覧性を良くしたり移動の利便性を高めたり出来る気がする.そうは問屋がおろさないのはやはりJPSの参加者(参加費)が少ない(安い)からなのかなと思うけれども,代わりに各地の大学開催ということでその大学のカラーが見られるのも捨てがたいし,世の中色々あるのだな(小並感)

量子情報×重力系のセッションでIan T Durhamという人の発表を聞いたが,これが特に面白かった.もちろん細かいことは殆ど覚えていないが,「物理的に真っ当な4つの仮定(測定の局所性,実在性は測定の方法によらない,みたいなやつ)は矛盾なく成立し得ない」みたいなステートメントを証明のスケッチも兼ねて30分足らずの発表時間できちんと説明していて凄かった.「局所性」「実在性」といった概念は普段の研究でも親しみがないので,新鮮であった.

何というか,自分の興味が色々な意味で推移しているのを感じる.

会議以外

やっぱり初日のアレで疲労回復が追いついていないので,今日も早めに休まないと,という感じである.

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APS会場の企業ブース,近郊の貿易センターの外観


  1. その前に比較的マシンガントークのネイティブの発表があったから,それでストレス値が減ったからというのもあるかも知れない.

  2. 一応,後から通販で買えないか確認したところ,売り切れだったものがその2つである.

APS March Meeting 2019(1日目)

更新が遅れたので,翌日の朝に投稿.

会議の感想

実は,朝の6時にデトロイトを経つ筈の航空便が更に遅延し,ボストンに到着できたのが正午過ぎだったため,14時頃に会場に 到着した後,セッションを1つだけ聴いて速攻で帰った(身体が本当にバキバキになった).

聴いたのは,「量子多体系で機械学習(意訳)」というやつで,最近流行り(?)のneural network quantum statesとかそのあたりの研究をしている人は一同に会していたと思う.

meetings.aps.org

よく紛らわしくなるのは,量子多体系も,沢山シミュレーションを行って波動関数なりの測定データを集めれば(古典系のそれと同様)機械学習の対象になるから,それを「量子機械学習」と呼ぶ向きもあるが,そうではなくて,学習に用いるネットワークを量子多体系と同一視しようというのが当セッションのメインテーマである.

それ以外

泊まっていたホテルがBattery Wharfという比較的会場から離れた場所にあったので,タクシーを取るのが良いという事前情報があった.それで,会場前に沢山停まっているタクシーに乗れば良かったのだが,行き先的には対岸から乗った方が良いと思って横断歩道を渡ったところから大冒険が始まってしまい,ボストンの寒い街を30分ほど彷徨うことになってしまった1

結局,区画をグルッと1周した後に会場に戻り,そこで素直にタクシーに乗るわけだが,何とプチインターチェンジみたいなのを利用して速攻で方向転換をしていた.「対岸から乗った方がメーターが節約できて云々」とは夢々考えないほうが良かったのである.

夕食は,NICOというイタリアンレストランで取った.コースで38$という良心的価格だった.またボストンに滞在することがあれば来たい.

www.tripadvisor.com

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2日目の参加にあたり,会場に徒歩で向かう途中で撮った景色.


  1. 途中,眼鏡屋さんで道を訊いたりしてすごく気まずかった.

APS March Meeting 2019(0日目)

アメリ物理学会に聴衆参加することになった.理由はよく分からないが,計算科学アライアンスという所が出していた抽選に当選したので,相当くじ運が良かったのだろう.せっかくなので,会議中良かったと思える講演やイベントがあったら逐一記録して,後から思い出せるようにしよう.

ただし,早速幾つかの災厄に見舞われてしまった.乗継便のデトロイト→ボストンの便が悪天候で遅延したことにより,我々は急遽行程の変更を迫られたのである: 本来は,デトロイトに到着直後(17:00頃)にボストン行きに搭乗し,その足でボストンのホテルにチェックイン.翌日の早朝から万全な状態で学会に参加の予定だった.一方,実際はどうだったかと言うと,デトロイトに到着し,しばらく右往左往した挙げ句に近くのホテルに宿泊し,何と翌日の早朝3:00時頃にチェックアウトして6:00頃のボストン行きの便に乗った.

なので,残念ではあるが1日目の(特に午前中の)セッションや各種イベントは諦めてホテルのチェックインや着替え・シャワー・仮眠に当てることになりそうである.まあ,夕方19:00頃に比較的楽しみにしているセッションがあるので,それだけは外さないようにしようと思う.

因みに,既に乗った飛行機(成田→デトロイト)はDelta航空のものだったが,Delta Studioという機内サービスのコンテンツで良い音楽コンテンツを見つけた:

www.allmusic.com

第2番が良かった.一般にBrahms交響曲を「普通の」解釈で振って組み立てるのはきっと難しいことなんだろうなと思う.それを真っ当にやり遂げる指揮者に久しぶりに出会えた気がする.

あとは,機内で時間を潰すために,最近見つけたPythonの教科書を読んだりした:

shop.oreilly.com

第1章がLinuxシェルの説明(パーミッション変更とか)に丸ごと割かれており,その後も比較的詳しくPythonの仕様やバージョン管理の方法を説明していくスタイルである."in Physics"と銘打っている割には,例えば偏微分方程式の数値解やモンテカルロシミュレーションの定常状態をどう求めるのか,といった具体的な話題は(目次を読んだ限り)少なかったと思う.ただ,前書きで「物理がよく出来ることとまともにソフトウェアを開発できることは別物で,スキルを即座にtransfer出来ることもない」という旨を繰り返し強調していて,そこに共感できた.数値計算を研究に使うかどうかに関わらず,物理学科の全ての学生に読ませたいと思った.

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機内の窓から.海外が久し振りだったので思わず撮ってしまった.

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急遽泊まることになったモーテル.

学振のアレコレを完全に反故にしてしまった話

どうもこんにちは. 久しぶりの投稿になります.

はてなの通知欄を見ていると,大昔に書いたFortran90の記事が定期的に(恐らくはGoogle検索を経由して)読まれているらしく,それだけで月間100PVから200PVを維持するのはちょっとあんまりなので,今後はもう少し真面目に更新していこうと思います.

そういえば,無事に博士後期課程に進学しました(そして約1ヶ月が経ちました).

後,大学の研究室に併せて,研究環境が増えました…

http://www.riken.jp/ccmp/index.html

(ちょっとまあこの辺は申請前後で色々あったのと,今も結構色々あるので,何かの折に思い出したら詳しく書こうと思います)

それで,今は週4で理研・週1で大学という生活リズムなので,完全に大学近くに家を借りたことが仇になっています.適当なタイミングで幾つかの乗換駅の最寄りか大学の提供する国際学生宿舎に住もうと思います.早くて今年度の9月・10月,遅くても来年度の4月ですね.

学振を反故にした話

実は,理研JRAに採用された一件もあり,自分の辿るルートとしては

    1. 今年DC2に申請し,来年度採用されて理研を退職
    2. D2, D3の2年間アレする
    1. 今年DC2に申請し,来年度不採用
    2. 来年再度DC2に申請し,再来年度採用されて理研を退職
    3. D3, ??の2年間アレする1
    1. 今年も再来年もDC2に申請し,両方とも不採用
    2. 理研を退職せずに頑張って学位取る

の3つを考えておりました.最後のはある種最悪の選択肢になります(D論の件も考えると,あまり日常的に大学に顔を出さないのはマズイし,理研JRAの身分だと講義も取りづらいので).もっとも,これらの選択肢は全て理研で年度更新が出来るというありがたい制度に支えられているので,それがなければどっちみちです.

ところが,ついこの間申請書を書くにあたって,過去の申請書の内容をどうやってパッチワークするか等色々考えていた矢先に2,学振のID・PWの発行を完全に忘れていたことが発覚しました.具体的には,偶然その日が締切日だったのですが,「研究室のロケーションは柏で,事務方の本部は本郷」というやつでトドメを刺されました.

というわけで,かなりの偶然かつ不当なタイミングで学振DC2へ申請するタイミングを失ったのでした.',、('∀) '`,、

いや笑っている場合ではないですね.ただ何というか,締め切りを過ぎてから気付いたわけでも無かったというのが悔しくて,正直ちょっと立ち直れませんでした.

この失敗には幾つか問題点があって,

  • 去年行ったはずの「期日までにID・PWを発行する」というタスクを完全に忘れていた
  • 「出さない」という決断を,自分の物忘れを切っ掛けに下さざるを得なかった

というのが,流石に笑えないなと.因みに,書く気では居たということはこの場で言い訳しておきます3.自分が危惧しているのは,こういう「どうでもいいことを切っ掛けに大切なことを逃す」系の失敗を今後も繰り返すのではないかということで,本当の本当にダメ人間にならないうちに防がないといけないですね…

思い返せば,去年度は本気で出す気だったので,まあある種の(具体的には差し控えますが)深層心理が出てしまったのかなとも思っています.

こういう失敗は,各種の通知メール(ID・PW発行のお知らせ等)を逐一Todoistにそのまま貼るなどして防いでいくしか無いかなとも思っています.

因みに,こういう劇的に恥ずかしい失敗を敢えてブログでご開帳した理由はただ1つで,ある種の自分に対する戒めです.

最近のセミナーで知ったトピック

最近になって,変な熱が入ったかのように流行りのテーマを勉強しています.勉強とは言っても,その分野の研究者と話が出来る程度にレビュー論文を読むとかそのくらいですが.

折角なので,自分がノートにメモした中で,比較的ちゃんと見返せるものをピックアップしておこうと思います.

2つの量子状態間の遷移にかかる仕事を通じ,一般の(開放)量子多体系が従う不等式を与える話.その不等式は,かつて特定のクラスの量子系について示されたCrooksの定理の拡張になっている.この手の話を聞いていつも思うのは,「セットアップを誠実にやればやるほど話が難しくなって,自明なステートメントしか与えられない」こと.逆に,イカサマを一切入れずに非自明なステートメントを導くのは厳しそうなので,「見かけ上イカサマだけど真面目な仮定」をどうやって入れるかが鍵なのかな,という印象がある.例えば,コントローラのハミルトニアンをどうやって入れるか,とか.一方で,見かけ上のイカサマを全部排除し,例えば「全体では時間依存性のない$\hat{H}$によるユニタリダイナミクスだけで話を閉じよう」とか思うと,技術的には大変だろうが,私自身はそっち方面のエンジニアリングに興味がある.コントローラの初期状態をヘンテコな状態にfixして,パッと手を話した時に,一体どんなコントロールが実現出来るか,とか.

従来のスケーリングの議論では,「あるデータ集合が正しい臨界指数のセットの下でcollapseする」という事実が多項式関数によるフィッティング+最小二乗法+割りと無根拠でiterativeな臨界指数の代入によって示されてきた.この議論には多数の問題点があるが,比較的ピンポイントな数値解析的な問題として「エラー関数が$x$軸の同一点における異なる$y$の値のみで定義されている」ことが挙げられる.カーネル法の(多分最も重要な)効能は「エラー関数の付加項として$x-y$図上の(縦方向の相関のみならず)斜め方向の相関を考慮し,それなりに妥当な強度で入れることが出来る」という点にあると思った.というか,発表を聞いて初めて理解した4

旧来より議論されてきた蜂の巣格子上のHubbard模型の(ある筈もない)スピン液体相を,計算機の数の暴力で排除しようというプロジェクト(かなり言葉の綾があります).実は,蜂の巣Hubbardと正方格子fluxは連続極限でGross-Neveu模型の異なる普遍性に属し,兄弟の性質を持つ.このことを傍証とし,見事にこれらの模型がMott転移しか起こさないことを実証する.余談だが,プレスリリースにも掲載された図3, 図4が大変綺麗.数の暴力は大事.

ディラック電子系に潜む普遍性を実証 | 理化学研究所

$V(x)=-1/x^{2}$型のポテンシャルを入れた1次元量子系で1粒子のSchrödinger方程式を解くと,スペクトル集合が$-\infty<E\leq 0$の全ての区間に属してしまう.この量子異常を取り除く為に正則化を施すと,今度は(同一の問題を古典論で扱った場合の)対称性を失い,また別の正則化では対称性を失わないが,よく分からないことになる.この手の量子化正則化に伴う対称性の破壊を一般の場合について調べ,どのような量子化正則化が妥当かを議論するという方向性があるそうだ.この辺もきちんと勉強していきたい.


  1. D2でDC2に申請して採用された場合に"合法的"にD4まで生活できるのって,制度的にいつまでなんですかね.DC2からPDへの自動鞍替えが無効化されたこともあるし,学振が採用人数増やす予定あるなら,確実に壊れそうな制度の1つかも知れないですね.

  2. よく考えれば,この時点で相当やる気がdecayしていたと思われる.

  3. 具体的には,幾つかの内容を再利用して1週間程度で一気に仕上げるつもりだった.

  4. 論文を読んでも氷解しない疑問は,大体こういう機会のお陰で取り除かれる.セミナーは正義.

修論 #2

今日は修論と関係のない話題で恐縮です.

PRE論文『Nonequilibrium phase transition in an exactly solvable driven Ising model with friction』について

内容については,出版社及びarXivからどうぞ.

journals.aps.org

[0909.0533] Non-equilibrium phase transition in an exactly solvable driven Ising model with friction

研究始めたての頃に目を通した時は,boundary magnetizationの計算で何故平均場近似が正当化されるのかなどと言って,数式を追うことに耽溺して結局読めなかった.しかし,この前目を通したらあっさり読めてしまい,「なるほど〜」と声が出たので,簡単にまとめておく.

  • 速度$v$である滑り面に沿って相対運動する2体の等価なIsing模型を考える(格子の次元・形状は任意).
  • $v \to \infty$の場合には,滑り面における磁化$m$があるランダム変数$\mu$による期待値で書かれ,滑り面に沿う方向の並進対称性から平均場の描像が成立する.
  • この手続によると,自己無到着方程式を任意の格子で書き下すことが出来る.よって,モンテカルロ・シミュレーションに頼らなくても,(方程式を解く際の)数値誤差の範囲で非平衡相転移の相図を得ることが出来る.
  • 非平衡相転移は,$v \to \infty$における有限の$T_{c}>0$で特徴付けられる.例えば,1次元のIsingスピン鎖が2本動いている場合には,実は(ある変数$\mathrm{e}^{-K}$の2次方程式が出現する都合上)2次元Ising模型と同じ転移点で相転移を起こすことが分かる.
  • 一方,スピンフリップによるエネルギー散逸のダイナミクスも「フリップ確率が2体スピンの相関の積で書ける」という特殊な可解性を課すと厳密に分かる1.この可解なダイナミクスに用いられる確率は"multipricative rate"と呼ばれる(日本語的には「掛け算式レート」かな).

やはり,数値実験に寄り添う分野だと,ある程度モンテカルロ・シミュレーション以外のこともきちんと遂行できて初めて論文になるのかなという印象を受けた.まあ,物理だから当然なのかも知れない.

Fortranで汎用ライブラリに変数空間を汚染される話

試しに,こんなソースコードコンパイルしたいとしよう.

PROGRAM main
  USE ifport
  IMPLICIT NONE

  INTEGER(kind = 4) :: stat_acc

  stat_acc = access("test.dat", " ")
  CALL system("echo hogehoge")
END PROGRAM main

ざっくり言うと,実行元ディレクトリにtest.datという名前のファイルが有るかどうかを調べるために,access()という標準では組み込まれない組み込み関数を用いて,状態を変数stat_accに格納し,その直後にシステムコールを用いてhogehogeという文字列をunix terminalから出力させようというプログラムだ.動機なんてどうでもいい2.ただ,それぞれの目的のために,あれこれを読み,何も考えずに実装しただけだ.

dynamicsoar.hatenablog.com

slpr.sakura.ne.jp

これをIntel Fortran Compilerにぶち込むと,次のようなエラーを吐く.

$ ifort test.f90 -o test
test.f90(8): error #6552: The CALL statement is invoking a function subprogram as a subroutine.   [SYSTEM]
  CALL system("echo hogehoge")
-------^
compilation aborted for test.f90 (code 1)

最初,エラー・メッセージでググっても何のことやらさっぱ分からなかったが,少し考えて,ある可能性に行き着いた.

「ひょっとして,system()という名の関数がifportから呼ばれている…?」

system()は,システムコールをやる時はsubroutineである.当然である.しかし,IFPORTモジュールにはどうやらfunctionとしてcontainされているみたいで,まあ結論から言えば名前が被ってしまったみたいだ.

これがもしmodule変数ならば,moduleの開発者側がprivate属性なりなんなりで隠蔽することが出来るが,subroutine名やfunction名だと引用する側がonlyなどで防がないことにはどうしようもない.よく言われるのは,「module側から隠蔽するのは性悪説,main文から必要最小限のもの以外は参照しないのは性善説に基づく実装だ」という話だけど,ちょっと今回のはsystem()というfunction名はセコいかなと思ったりした.

というわけで,呼びたい手続き(ここではaccess())だけをonly文で引くように,次のように書き換える.

PROGRAM main
  USE ifport, only: access
  IMPLICIT NONE

  INTEGER(kind = 4) :: stat_acc

  stat_acc = access("test.dat", " ")
  CALL system("echo hogehoge")
END PROGRAM main

こうすることで,無事にコンパイルも通り,実行結果もまともになる.幸あれ.

$ ifort test.f90 -o test
$ ./test
hogehoge

  1. 通常のモンテカルロ・シミュレーション(例えばGlauber確率やMetropolis確率に従ってシングルフリップ時間発展する場合)では,あるスピンがフリップする確率は,常に格子次元$d$に応じた複数個の隣接スピン全ての配位で確定する.よって,多体相関の影響で有効的に時間発展が加速されていると考えることが出来る.その最たるものがクラスター・アルゴリズムだか何だかだ.逆に言えば,この論文で手で解けるように導入されたmultiprivative rateをモンテカルロ・シミュレーションに導入すると,ダイナミクスはGlauber確率やMetropolis確率のそれと比べると2倍程度遅くなるということが,彼ら自身によって指摘されている(論文ではacceptance rateの図で明確に示されている).

  2. 実際には,ちょっと複雑な処理を行う数値計算プログラムの実装のヤバいところを簡略化して記述したノンフィクションである.